日本共産党福島県ボランティア情報

日本共産党が福島県内で行っているボランティア活動のお知らせや募集などを紹介していきます。

原発被害の子どもにたいするいじめ問題

いじめ経験9人
原発避難原告世帯 判明分【神奈川】
(しんぶん「赤旗」12月20日付15面より)
 東京電力福島第1原発事故で福島県から横浜市に避難した生徒に対するいじめがあったことをうけて、福島県原発避難者支援かながわ弁護団は19日、同市の神奈川県弁護士会館で記者会見し、避難者のいじめ経験の調査結果を発表しました。

 弁護団は神奈川県への避難者のうち、横浜地方裁判所に訴訟を提起している61世帯の原告の裁判資料などを調査。少なくとも8世帯9人の子どもがいじめを受けた経験があることが確認できたと報告しました。
 いじめの内容は、当時小中学生だった児童・生徒が、同級生や上級生から暴言、暴行を受けたもの。暴言のなかには「福島へ帰れ」「福島県民はバカだ」「福島県民は奴隷だ」といったものもあり、不登校になった生徒もいました。
 調査は、原発訴訟に提出された陳述書に書かれたことを調べたもので、すべての原告に聴取を行ったものではないため、いじめがあった陳述書には記載しなかったという可能性があります。弁護団事務局長の山野健一郎弁護士は「(表面化されていない)さらなるいじめがある可能性はある」と指摘しました。
 事務局長の黒澤智弘弁護士は「避難者の立場を国も定義していない。きちんとした形で支援していくことが必要」だと述べました。

原発避難者に理解を
相次ぐいじめ 原告団連絡会が声明
(しんぶん「赤旗」12月23日付15面より)
 東京電力福島第1原発事故で福島県から避難した人へのいじめが相次いで発覚したことを受けて、原発被害者訴訟原告団国連絡会は22日、東京都内で会見し、避難者への理解を求める声明を発表しました(下記の声明【要旨】参照)。

 同会共同代表・事務局長の佐藤三男さん(72)が、声明を読み上げ、各地で避難者の子どもに対するいじめがあり、その根底に被害者の置かれた現状に対する周囲の誓いの不足があると指摘しました。「賠償金をもらったことでいじめの対象になっているという報道がありますが、いわき市民への賠償はたった12万円。しかも、もらっていない原発被害者も差別を受けている」と訴えました。来年3月末に、避難区域外から避難した「自主避難者」への住宅無償提供を国と福島県が打ち切ろうとしています。この問題について、同会共同代表の鴨下祐也さん(48)は、「複数回の転校中に一度いじめられ、『次は福島(の住民)だった言わない』と決め、ようやく転校先で落ち着いた子もいます」として、支援の打ち切りは転校を余儀なくし、いじめを生み出す可能性となると述べました。
 全国連絡会は今回の会見で、いじめ・差別を行った人を特定するのではなく、その背景に何があるのかに目を向けるような形で報道してほしいと訴えました。

12月22日に原発被害者訴訟全国連絡会が発表した「原発被害の子どもにたいするいじめについて」の声明(要旨)は以下のとおりです。

原発被害者の子どもにたいするいじめについての声明【要旨】
2016年12月22日

原発被害者訴訟原告団国連絡会

■胸が痛むいじめ事件
 横浜市の事例をはじめとして、各地に避難している原発避難者の子どもに対するいじめ事件が報道されています。

 私たちは、「いじめ」の連鎖に深い悲しみと怒りに打ちひしがれています。どのような理由であれ、いじめは絶対に許されるものではないことを訴えます。学校は子どもたちの成長や悩みに寄り添い、すこやかな人格形成を進める場であってほしいと願います。
 残念なことに、報道された原発避難者の子どもに対するいじめは氷山の一角です。子どものみならず、大人の世界でも、心ない仕打ちや嫌がらせが続いているのが実情です。全国21か所で提訴している私たちの裁判の中でも、多くの法廷で、子どもや大人に対するいじめや嫌がらせがあることが明らかにされています。

  • 避難地から福島に戻り、新しい学校に転校、少し新学期から遅れたために、いじめにあった。不登校になり、転校した。
  • 福島県民と分かると差別されるので、出身地を言えない。隠れるように生活している。
  • 福島から来ましたとあいさつしたら、あなたとはおつきあいできませんと言われた。

 このような事態が生じてしまう根底には、残念ながら、以下のとおり、原発事故による被害者が置かれた現状に対する周囲の理解不足があると感じています。

原発事故による避難者が置かれた現状
 原発避難者は、原発事故そのものによる被害を受けたばかりか、被害区域の線引きによる「分断」、不当な「帰還政策」による被害者の切り捨てによって、さらに苦しめられています。

 被害補償の打ち切りによって不本意な帰還を余儀なくされ、他方では避難区域外からの避難者は、現に避難生活が続いているのに、何の保障も得られず、困窮に陥るという事態が生じたのです。
 さらに昨年から、国と東京電力は「帰還強要」政策を強めました。来年3月には帰還困難区域を除いた避難区域を解除し、併せて賠償と住宅支援打ち切りという被害者の切り捨てを強行しようとしており、福島県もそれを容認しています。
 他方で、帰還困難区域についても、復興支援住宅などへの「定住」を求める政策が始まっています。これらは、「もう安全だから避難など認めない」か、「もう戻れないのだから移住しろ」という両面によって、「避難者をいなくする=抹消する」ことを目論む政策と言わざるを得ません。
 その「論拠」として言われているのが「20ミリシーベルト以下の放射線被ばくには健康への影響はない、がんの発症率は、喫煙、肥満、野菜不足のほうが高い」などという「20ミリシーベルト安全論」です。しかし、ICRP(国際放射線防護委員会)の見解では、100ミリシーベルト以下においても、被ばくした線量に応じた影響があるとされています。それにもかかわらず、国と東京電力は、あたかも福島県全土が放射能汚染から解き放たれた安全な地域になった、帰らないほうが悪いと思わせようとする政策をとり続けているのです。
 こうした意図による「復興政策」のために、困難な避難生活をしている被害者が一層困難な状況に追いやられていることを、どうかご理解頂きたいと思います。

■深刻な被害の継続と、国と東電の明白な加害責任
 各地における被害者を原告にした裁判を通じて、避難区域からの強制避難者も避難区域外からの避難者も同様に、避難生活による著しい生活阻害による苦痛が今も続いていること、そして、「故郷(ふるさと)の喪失」という深刻な被害が生じていることが明らかになっています。

 被災者の多くは、懐かしい町で家庭を築き、学び、働き、地域の暖かな交流の中で過ごしてきたのです。そうした大切な故郷に戻れないということは、耐えがたい事態です。
 多くの被害者は皆、故郷を深く愛しているけれども、避難をする必要があるので避難を続けているのです。誰が、深く愛している故郷を、理由もなく離れることができるでしょうか。被ばくを避けるためにやむを得ず行っている避難生活について、心ない批判や理不尽な仕打ちを受けることは、まことに残念な事態です。

■私たちは訴えます
 子どもの社会で起きていることは、大人の社会を映し出している鏡のようなものです。子ども達に対するいじめがあってはならないことはもちろんですが、これを子どもだけの問題として捉えるのでは不十分です。私たちは、上記のとおり、やむを得ず故郷を失い、困難な避難生活を送っている深刻な被害、あるいは今も日々被ばくの不安にさらされている被害の実相について、多くの国民のみなさんのご理解を切に願うものです。それが、原発事故を二度と起こさないための、そして被害者への二重の侵害となるいじめを繰り返さないために必要な礎になると信じます。

 みなさまのご理解と温かいご支援をお願いいたします。

以上

京都・立命館宇治高等学校の生徒さんから取材をうけました

「Beyond京都×福島」
京都・立命館宇治高等学校の生徒さんから取材をうけました

  12月16~18日まで、京都の私立立命館宇治高等学校の生徒さんたちが福島県を訪れ、17日に同校生徒さんたちから日本共産党福島県委員会への取材を受けました。同校は2014年から立命館大学の学生および付属校生徒を主体とした「フクシマ災害復興支援活動」の一環として、被災地視察や仮設住宅などでの支援活動に取り組んでおり、「Beyond 京都×福島」と称して取り組みが継承されています。
 今回、こういった支援活動とあわせて、生徒さんによる福島駅頭などでの福島県民へのインタビュー(聞き取り調査)をはじめ、福島県内の各政党や新聞社などグループをつくって訪問し取材をするということで、日本共産党福島県委員会にも声をかけていただき取材を受けさせていただきました。

 政党への取材は、民進党では福島県連代表代行の金子恵美衆院議員が対応し、日本共産党福島県委員会は被災者救援対策本部事務局長の私・野口が対応。なお、生徒さんが直接自民党への取材申し込みをしたそうですが、「土曜はいろいろ忙しい」などと理由をつけて取材を断ってきたとのこと。
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  日本共産党福島県委員会への取材は、同校のみなさんが宿泊しているホテルのロビーで行われ、3人の生徒さんと引率教員の森口先生が同席しました。
 

 質問内容は、

  • 共産党は被災者支援活動にどのような方針で活動してきたか」
  • 「被災者支援活動の中で学んだことや教訓は?」
  • 日本国憲法13条・25条に関連して、被災者にこの憲法の理念が保障されていますか?」
  • 「今後、被災者に必要な支援とは?」
  • 原発事故の責任は?」
  • 「今後原発をどうすべきか?」
  • 原発事故での甲状腺がんは増えているのですか?」
  • 「帰還が可能になっても戻らない(戻れない)避難者」に行政はどのような支援をするべきでしょうか?」
  • 「今後の賠償金(補償金)の打ち切りに対して、どうかんがえていますか?」

などなど。

 取材時間は2時間30分に及びましたが、いろんな質問がでてあっという間に時間が過ぎました。できるかぎり福島の現状や私たちが取り組んできた活動の経験、第26回党大会決議、第27回党大会決議案なども資料として示しながら、いまの福島の実態に即して誠意をもってお話しをさせていただきました。

 同校のみなさんは、前日に南相馬市小高区で視察や復興公営住宅で懇談。取材をうけた翌日には本宮市内で浪江町のみなさんが避難生活をおくる仮設住宅を訪ね、福島「なみえ焼きそば」vs京都「宇治茶そば」対決を通して避難者との交流・懇談をしたとのこと。
 県外の高校生が福島に思いを寄せてくれている、それだけでも本当にうれしい限り。目を輝かせて真剣に質問し、話をきいてくれる高校生たちの姿に、本当に希望の星です。若いって、すばらしいですね!

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全国37の市町村議会で自主避難者への住宅無償支援継続を求める意見書採択

 なお、同校の所在地である京都府宇治市をはじめ、京都市八幡市の各市議会で「東日本大震災による避難者の住宅無償提供を求める意見書」が採択されおり、それを含む全国37市町村(2016年12月9日現在)で同様の自主避難者支援に関する意見書が採択されています(福島県調べ)。

(県:のぐち)

福島第2原発 使用済み核燃料プールなど視察

【福島第2原発
使用済み核燃料プールなど視察
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【写真】福島第2原発3号機の原子炉圧力容器下部の制御棒の駆動装置を調査する党議員団ら=16日
国会議員団が調査
(しんぶん「赤旗」12月15日付15面より)
 日本共産党国会議員団は16日、東京電力福島第2原発福島県楢葉町、富岡町)を調査しました。石崎芳行・福島復興本社代表、石井武生・同原発所長らが応対しました。
 調査団は、3号機原子炉建屋やタービン建屋に入り、重大事故などの緊急時に炉心を冷却する装置のほか、福島県沖を震源とする11月22日の地震で冷却が1時間半にわたり停止した使用済み核燃料プールなどを視察しました。
 制御室を模したサイトシミュレーターでの大震災を想定した訓練は、作業員が原発稼働中の操作手順を確認していました。調査団は「再稼働を考えているのか」とただしました。東電側は、第2原発の扱いは未定とした上で「第1原発廃炉を最優先にし、第2原発はそのための後方支援を担っている」と答えました。
 高橋千鶴衆院議員は、「11月の地震では、原発が稼働していなくても、住民に不安が広がった。第1原発の事故収束と福島の復興は、第2原発がかぎだ」と述べました。
 福島第2原発は、福島県をはじめ地元自治体が廃炉を求めています。
 調査には高橋議員のほか、笠井亮塩川鉄也、真島省三=以上衆院=、岩渕友、辰巳孝太郎=以上参院=の各議員と、熊谷智・衆院福島5区候補が参加。原発問題住民運動国連絡センターの伊東達也・筆頭代表委員ら、市民団体の代表も加わりました。
 議員団らは原発調査後、滝沢一美・富岡町副町長、坂本寿昭・双葉地方町村区長会長連絡協議会会長らに案内され同町内を視察しました。

『避難いじめ把握必要』  福島県議会 宮本県議が質問

避難いじめ把握必要
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福島県議会 宮本県議が質問

(しんぶん「赤旗」12月17日付13面北海道・東北のページより)
 福島県議会の一般質問が13日行われ、日本共産党の宮本しづえ県議が質問しました。
 宮本県議は、原発事故のため県外に避難している児童・生徒へのいじめが起こっている問題で県は実態を把握すべきであり、国に放射線教育の徹底を求めるべきだと質問。内堀雅雄知事に子どもの貧困対策の具体化を問いました。
 賠償問題で宮本県議は、「すべての県民の精神的損害に関する賠償を国、東電に求めるべきだ」と質問しました。
 さらに農林業の営業損害について、「被害がある限り賠償を継続するよう東京電力に求めるべき」だと質問。担当者は「年内に開く原子力損害対策協議会全体会で見直し案に関する国と東電の考えを確認するとともに、関係団体の意見も聞きながら取り組む」と答えました。
 宮本県議は、県立聾(ろう)学校の校名変更の議案が突然出されたことに関係団体から怒りの声があがっていると述べ、「校名変更の条例改正を見送るべきだ」と迫りました。

 

復興への要望聞く  【党国会議員団】 福島・富岡町長と懇談

復興への要望聞く
国会議員 福島・富岡町長と懇談

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【写真】宮本町長(右から2人目)と、齊藤副町長(その右)らと懇談する党国会議員団ら(左側)=15日、福島県郡山市
(しんぶん「赤旗」12月16日付15面より)
 日本共産党国会議員団は15日、東京電力福島第1原発事故で全町避難している福島県富岡町の宮本晧一町長、齊藤紀明副町長と復興の取り組みをめぐり、郡山市内の同町事務所で懇談しました。同町は来年4月の帰還開始を目指しています。
 笠井亮塩川鉄也高橋千鶴子=以上衆院、岩渕友、辰巳孝太郎=以上参院=の各議員と熊谷智・衆院福島5区候補らが参加。同町は10月に公設診療所を開設し、来年3月には役場機能を本格的に再開する予定です。
 宮本町長らは、町による住民調査で「将来戻りたいと答えた町民が16%にとどまるが、将来の帰還という選択肢をつくりたい」と主張。その上で、国が復興・創生期間と位置付ける2020年で、視線を終わらせてはいけないと述べました。  帰還するにあたっての町民の最大の要求は「除染対策」だとし、目標として年間被ばく線量が1ミリシーベルト以下になるよう国による除染の継続を訴えました。

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【写真】富岡町からの避難者(手前)と懇談する国会議員団ら(奥右から熊谷智・衆院福島5区予定候補、辰巳孝太郎参院議員、岩渕友参院議員、高橋千鶴衆院議員、笠井亮衆院議員、塩川鉄也衆院議員)=15日、福島県郡山市

  党議員団は郡山市内に避難している町民から要望を聞きました。来春に帰還を予定する渡辺忠道さん(86)は「一番心配なのは福島第2原発の再稼働だ。原発はいらない」。「仕事がなければ子や孫に帰って来いと言えない。雇用も大事だ」の声もありました。  高橋議員は、国の復興策が形だけで終わらないように尽力すると表明しました。
 ※なお、国会議員団は本日(16日)、今年11月22日に発生した福島沖地震で燃料プールの冷却装置が一時停止するなどのトラブルが相次いだ東京電力福島第2原発を視察します。

「廃炉決断 国に迫れ」 福島県議会 吉田議員が代表質問

廃炉決断 国に迫れ
福島県議会
吉田議員が代表質問

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(しんぶん「赤旗」12月11日付13 北海道・東北のページより)
 福島県議会本会議が9日開かれ、日本共産党の吉田英策県議が代表質問しました。 吉田県議は「11月22日の福島県地震により東京電力福島第2原発(4基)の3号機燃料プールで冷却用ポンプが停止するというトラブルが発生したことを踏まえ、同原発廃炉の決断を国と東電に迫るべきだ」と内堀雅雄知事に問いました。
 内堀知事は「このトラブルは本県全体に大きな不安を呼んだ。全国知事会の場でも副総理などに廃炉を要請したが、避難先から戻った人、これから戻ろうとする住民の思い、県民の思いを強く求めていく」と述べました。
 吉田県議は、今回の地震により同第1原発津波対策の脆弱(ぜいじゃく)性が改めて浮き彫りになったと指摘。「防波堤の本格的な復旧を早急に行うよう東電に求めるべきだ」と迫りました。
 吉田県議は内堀知事の国連本部での講演にふれ、「被害が継続している福島の現状を国内外へありのままに発信すべきではないか」と質問。同知事は「(福島県はまだ)多くの課題がある。これを復興しつつある姿とともに発信したい」と答えました。
 吉田県議は、福島第2原発1~4号機建屋内にある使用積み核燃料などを早急に乾式のキャスク(遮蔽<しゃへい>機能を持った容器)で安全に保管するよう東電に求めるべきだと質問。来年4月以降の住まいが決まっていない自主避難者に応急仮設住宅の供与を継続すべきことや、すべての学校の耐震化、トイレ様式化、教室のエアコン設置を急ぐよう求めました。

【主張】ベースロード市場 原発温存支援の新たな手口だ

【主張】ベースロード市場
原発温存支援の新たな手口だ
(しんぶん「赤旗」12月13日付【主張】より)
  東京電力など大手の電力会社が原子力発電所や石炭火力発電所などで発電した電力を、原発などを持たない「新電力」に売り渡す「ベースロード電源市場」創設の動きが本格化しています。経済産業省が検討してきたもので、「新電力」に電力を供給することを口実に、原発を温存し、同時に「新電力」にも原発事故の処理費用を分担させる狙いです。東京電力福島第1原発事故に伴う廃炉や除染、賠償などの負担は巨額に上ると見積もられています。原発温存と一体になった電力業界支援の新たな仕組みを持ち出すのは許されません。

脱原発の願いに反して

 「ベースロード電源市場」の創設は、経産省が9月に総合資源エネルギー調査会経産相の諮問機関)に設置した有識者会議「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」が「市場整備ワーキンググループ(WG)」で検討、中間報告で打ち出したものです。大手の電力会社が原発などで発電した電力を、販売価格を多少抑えて、太陽光・熱や風力などで発電している「新電力」に、販売量全体の3割程度提供するとしています。

 「新電力」はもともと、電力会社が独占していた発電を開放し、太陽光など化石燃料に依存しない再生可能エネルギーの開発を促進していくためにも進められてきたものです。新しい市場の創設で規模拡大が可能になる「新電力」もある半面、原発に依存したくないからと「新電力」に切り替えた人も多いのに、「市場」を通じることで原発が発電した電力まで買わされるのでは、利用者の願いに反することになります。

 経産省が新しい市場を「ベースロード(基幹的な)電源市場」と呼ぶのは、太陽光や風力の発電は季節や天候で不安定だといいたいためですが、その対策には今ある「卸電力取引所」などで「新電力」が電力会社などの余った電力を安定して買える体制を整備すればいいことです。わざわざ原発などで発電した電力を販売する「ベースロード電源市場」を創設し、価格などで釣って「新電力」に買わせるというのは、原発温存・支援策以外の何物でもありません。

 背景には「新電力」の進出で大手電力会社などの経営が脅かされているのに加え、東京電力福島第1原発事故後の除染や賠償、廃炉などの費用が膨らみ、東電以外の電力会社も費用の分担や積み立てが求められているため、少しでも電力会社の売り上げを増やすとともに、「新電力」にも負担を押し付けたい思惑があります。安全よりも経営を優先する電力会社の姿勢と、それに手を貸す経産省・安倍政権の姿勢は言語道断です。

国民に巨額負担押し付け

 経産省が「電力システム改革貫徹」の小委員会と同時にスタートさせた財界人などの「東電改革・1F(福島第1原発)問題委員会」の審議も大詰めです。経産省は21・5兆円に上る除染、賠償、廃炉などの費用を、国からの援助だけでなく、「新電力」にも負担させて賄おうとしています。原発事故の処理費用はまず事故を起こした東電が負担すべきなのに、その点をあいまいにして、国民に押し付けるのは許されません。

 国と東電に総力を挙げた事故収束と廃炉を求めるとともに、原発を温存しない、「原発ゼロ」への決断がいよいよ重要です。